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口頭での解雇通告(解雇予告)にまつわるリスクとは?

Q. 仕事のミスにより会社に損害を与えた従業員に「反省文を書き終えるまで会社に来なくていい」といったところ、そのまま出社しなくなってしまいました。本人の自宅や携帯などに再三連絡したのですが応答もなかったため、そのまま自己都合退職として処理し、離職票を郵送してひとまず一件落着と考えておりました。ところが、3ヶ月ほど後になって会社に弁護士を代理人とした内容証明郵便が届き、会社が行った解雇は無効であり、職場への復帰と復帰日までの賃金を要求するといった趣旨のことが書かれておりました。会社としては解雇を行った意図はまったくなく、本人が無断欠勤をしており連絡もつかなかったため、退職の意思表示があったものと認識しております。このような場合、会社としてどのような対処をすればよいでしょうか。


A. 従業員が会社側に解雇の意思がないことを知っていた場合、あるいは知ることができた場合には、民法上の「心裡留保」として解雇通告(解雇予告)は無効となりますが、そのことを立証する責任は会社側にあるとされています。お話の内容によると「会社に来なくていい」の前に「反省文を書き終えるまで」と前置きをされているため、解雇ではなく、業務命令あるいは指導の一環と解釈されます。また、無断欠勤のうえ連絡がつかなくなった件については説明を求めていくべき点といえます。しかしながら、きっかけとなった口頭でのやり取りについては客観的な証拠が残っておらず、会社の主張が認められなければそのまま解雇とも取られかねない状況です。極力、状況を明らかにする資料や周囲の証言などを集めて根拠とし、回答すべきと考えます。


1.口頭で解雇通告(解雇予告)を行った場合に会社が被るリスクとは?


① 叱咤激励が口頭での解雇通告(解雇予告)とみなされる場合もある
上司が部下を叱咤激励する意図で「クビだ」、または「明日から来なくていい」などと言い、それを従業員が解雇の意思表示と受け取ってしまう場合がありますが、不適切な表現であることはさておき、解雇通告(解雇予告)として有効となる可能性があります。法律上は表現の内容および状況により、従業員が上司に解雇の意思がないこと(心裡留保)を知っていた場合、あるいは知ることができた場合には、解雇通告(解雇予告)は無効となります。しかし、解雇の意思表示と取られかねない表現を盾にとって、従業員が会社に対し「一度なされた解雇」の無効および付帯して損害賠償を請求してくることも考えられ、その場合には「そもそも解雇は行っていない」ことを立証する責任はうっかり言ってしまった会社の側となります。そのため、日常の指導の場において安易に解雇の意思表示と取られる表現を用いるべきではありません。


② 口頭での解雇通告(解雇予告)は認められるが証拠が残らない
解雇とは、会社から従業員に対する意思表示によって一方的に労働契約を解除する法律上の行為であり、同意がなくとも、従業員側に到達した時点でその効力が発生します。形式について労働基準法上の定めはないため、民法の一般原則により、口頭による解雇通告(解雇予告)であっても、従業員に伝達さえすれば有効ということになります。さて、労働基準法第20条により、解雇を行う場合は30日前の解雇予告を行うか、その期間を短縮する日数分の解雇予告手当の支払いが必要となり、それによらない解雇は、少なくとも解雇を通知してから30日を経過するか、所定の解雇予告手当が支払われるまで無効とされます。もし、解雇通告(解雇予告)を口頭で行うと、その証拠が残りませんので、従業員側から「聞いていない」などと主張され、解雇予告としての効力を否定され、即日解雇とみなされてしまうリスクがあります。また、解雇通告(解雇予告)は解雇の日を特定して行う必要がありますので、「クビだ」といった表現では解雇の日を特定したことにはならず、やはり即日解雇とみなされてしまうリスクがあります。場合によっては改めて30日前の解雇通告を行うか、その期間を短縮する日数分の平均賃金を支払わなければならず、いたずらに時間または金銭を費やしてしまいかねません。ちなみに、「明日から来なくていい」という表現であれば、明らかに即日解雇となります。



2.結局、解雇通告(解雇予告)は書面で行うべきである。


① 口頭よりはメール、メールよりは書面の手渡し
会社から従業員に対しての解雇通告(解雇予告)については、メールによる伝達でも差し支えありません。口頭による通告と比べれば、送信日時、受信者および発信者、内容などの記録が残り、解雇通告(解雇予告)を行った証拠として認められやすいといえます。ところで、解雇通告(解雇予告)の効力が発生するのは、会社側(人事権者)が従業員にその意思表示をし、従業員側に到達した時点とされています。口頭で通告を行った場合や、その場で解雇予告通知書を手渡した場合には、その時点で解雇通告(解雇予告)として有効となりますが、メールで通告を行った場合には、メールが相手方のサーバーに到達した時点(開封および読了の時点ではありません)に到達したものとして、解雇予告日が確定することとなります。発信から到達までにタイムラグが生じるリスク、および何らかの理由で遅延や不着が生じるリスクはどうしても生じてしまいます。郵送で通告を行う場合もリスクおよび効果はメールとほぼ同様でして、同居の家族が受け取るか、不在の場合の保管期限を経過すれば、本人が開封および読了したかにかかわらず、解雇予告日が確定することとなります(タイムラグ、遅延や不着のリスクについてはメールと同様です)。結局、従業員本人に直接書面の手渡しをして受領書などを取っておくのが最も確実な方法といえます。


解雇通告(解雇予告)の手段の比較

 

客観的証拠

タイムラグ

到達のタイミング

口頭

なし

なし

即時

メール

送信済みメール

数分~1日ほど

相手のサーバーに到達した時点

書面の郵送
(内容証明郵便)

通知書の謄本
(郵便局の証明)

1~2日ほど

本人または家族の受領、
または保管期限の経過

手渡し

通知書のコピー

なし

即時

手渡しおよび受領書の受け取り

受領書

なし

即時


② 結局、書面を請求されれば応じなければならない
解雇を行うことに後ろめたい意識があるために、口頭で解雇を行って証拠を残さず、後から責任を追及されないようにしようと発想される方もいらっしゃいますが、解雇予告を行った従業員から「解雇理由証明書」の請求があった場合、会社は解雇予告を行った日および解雇理由(就業規則上の根拠と事実関係を含む)などを記載した解雇理由証明書を作成し、交付しなければなりません。また、退職日以降に従業員から請求があった場合、会社は使用期間および退職の事由(解雇の場合はその理由を含む)などを記載した「退職証明書」を作成し、交付しなければなりません。これらは労働基準法第22条により義務づけられており、違反した場合は6ヶ月以下の懲役や30万円以下の罰金が科せられることもあります。結局、会社は解雇に関する書面の交付が義務づけられることとなり、その内容に応じて労働基準法および労働契約法等に照らし、解雇が有効かを判断されることとなるため、解雇を行うならば、そもそも最初から書面で解雇通告(解雇予告)を行った方がトラブルの予防に資すると考えられます。



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