1.懲戒解雇を行うために必要なこと。
① 懲戒解雇が認められるのは意外に難しい
就業規則に「社員が14日以上無断欠勤をしたときには解雇とする」と規定をされている会社さんは少なくないかと思います。 実際に社員が行方不明となったときには、その規定を持ち出して懲戒解雇としたくなりますが、行方不明となった原因を確認しないまま解雇を強行することにはリスクがあります。 本人が解雇の後からひょっこり会社に出てきて、勤務を継続する意思があると言ってきた場合に、どのように反論するかということを考えねばなりません。 たしかに、就業規則に根拠となる定めがあり、それが社員に周知されていれば、解雇とできる場合はあります。 しかし、解雇が裁判などで認められるには「客観的で合理的な理由があり、社会通念上相当」であることが必要とされます。 つまり、会社が懲戒解雇を行うには、それがやむを得ないと認められるだけの客観的な証拠を準備して臨む必要があるということです。
② 欠勤の原因を確認し、証拠を積み上げていく
労働基準監督署において「解雇予告除外認定」(社員に重大な非違行為があったとして30日の解雇予告期間をおかない即時解雇を認める)がされる基準として、社員が2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合というものがあるため、ひとまずこれを懲戒解雇を行う際の指針と考えます。 会社としては、社員の側に事故や急病などのやむを得ない理由がないか、会社側にいじめなど欠勤の原因はなかったかということを確認し、同時に出勤を督促することになります。 まずは電話で本人や家族、そして身元保証人などに連絡をしますが、その際に連絡がついて本人に退職の意思があるということが判明する場合もあります。 それでも連絡がつかない場合は、内容証明郵便などで出勤の督促を行い、会社が督促したにもかかわらず出社しなかったという証拠を残します。
2.退職とするための手続き。
① 解雇の意思表示を行う
最終的に懲戒解雇とすることが決まった場合には、書面などで解雇の意思表示を社員本人に対して行うことになります。 この解雇の意思表示は本人に到達しなければ効力を生じませんが、本人が自宅にいるのか不明な状況ではどうしたらよいのでしょうか。 そのような場合には、いくつかの方法があります。 解雇の意思表示は本人が自宅に不在であったとしても、同居の家族に到達すれば効力が生じるものとされているため、そのまま自宅に内容証明郵便を送る方法があります。 それでも本人が行方不明となり、同居の家族とも連絡がつかない状況では無効となってしまうため、民法第97条の2による「公示送達」という方法をとることになります。 「公示送達」とは、行方がわからない相手に対し意思表示を行ったことを、法的に証明するための方法です。 相手先の最後の住所地の簡易裁判所にこの申立てを行うと、相手に通知したい内容、この場合は解雇通知書などが、一定の期間、官報や役場の掲示板に掲示されます。 それによって、(実際に相手が見たかにかかわらず)2週間後には意思表示が相手方に到達したと見なされます。 この公示送達を行ってなお連絡がつかない場合には、事後に労働基準監督署による解雇予告除外認定を受けられ、すぐに懲戒解雇の手続きへ移行することができます。 時間と手間のかかる方法ですが、最後の手段として覚えておくと良いでしょう。
② 退職の申し出があったものと見なし、自然退職とする
公示送達まで行って解雇とするならば、より少ない時間と手間、コストで退職させる方法があります。 それは、無断欠勤をしたことにより、退職の申し出があったと見なし、自然退職とする方法です。 就業規則にその旨の定めがされ、社員に周知されている場合には、一応、その定めによる扱いは有効となります。 自分の仕事を放って行方不明になってしまうというのは責任放棄に等しい行為であり、もはや働き続ける意思がないと見られても仕方がありません。 しかし、行方不明となった当時の状況を見て、なにか事故に遭っただとか、急病で搬送されたというようなこともあるかもしれません。 そのようなやむを得ない理由のある場合に、一概に退職の申し出があったとみなし、自然退職とするのは危険です。 社内では行方不明となった社員の同僚や上司などに事情を確認のうえ、家族や身元保証人などに状況を問い合わせるようにし、さらに念を入れるならば内容証明郵便で出勤を督促しておきましょう。
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