1.交渉が行いやすいよう地ならしをしておく。
① 交渉の前にどのようなことをルールとするか
労働組合は通常、すぐに面会しての交渉を要求してきますが、その前に、以下のようなことをルールとして決めておくとのちのちの交渉がスムーズになり、手間や時間、その他会社にとってのリスクを減らすことができます。
・交渉を行う内容
・出席するメンバー
・交渉を行う時間
・交渉を行う場所
・記録の方法、席順など
とくに交渉の内容は事前に絞り込んでおかないと、争点が定まらず、労働組合に余計な要求までされかねません。 あらかじめ会社としての希望を書面で通知し、労働組合の回答を待って調整していくことになります。 書面の往復だけでは、交渉のルールが合意に達しない場合もありますが、交渉にあたっての準備会を開くという方法があります。この場合は、出席人数と時間に気をつけてください。あくまでもルール設定のための話し合いにとどめて、交渉の本題には入らせないためです。人数は、会社側と労働組合側の双方から2名ずつ、時間的にはせいぜい1時間程度にしておくとよいでしょう。互いに顔を合わせ、相手の人柄を知っておくと、団体交渉がよりうまく運ぶという利点もある一方で、先に申し上げたような危険もあるので、その点は慎重に行う必要があります。
② 交渉に出席するメンバー
労働組合が社長の出席を求めてくることはよくあります。先方にとっては、その場で決済を下すことのできる社長が交渉のテーブルに着いた方が、自らの要求を通しやすいのです。 しかも、社長は会社の他の仕事にあたっているのが普通ですので、交渉が長引くと負担になり、早く切り上げようと相手側に有利な条件で妥結してしまいがちです。 人事部長など労働条件について交渉する権限のある方であれば問題はありませんので、なるべく代理を立てるようにしてください。 なお、必ずしも交渉の場ですぐに判断を下す必要はなく、議論を会社に持ち帰って社長などと相談することも問題はありません。 つぎに、交渉に参加する人数を制限しなければなりません。 組合側が意図的に大勢で押しかけることもあり、感情的になった相手方からヤジが飛ぶなど、交渉を進めづらくなることがあります。 会社としても、多勢に無勢では意見を言いづらくなってしまうでしょう。 そのようなことのないよう、人数はたとえば労使双方4名までなどと制限をかけておきます。 ちなみに、たとえば雇い止めになった元社員の数が多い場合など、相手方が全員出席にこだわるような場合があります。 その場合には、初回だけと断った上で相手の希望を通し、次回よりの人数はまた交渉するという進め方も致し方ありません。
2.会社として決めておきたいルールとは?
① 交渉を行う場所、時間
交渉を行うのは社外の施設で、所定労働時間外に行ってください。 交渉を社内で行った場合、トラブルが発生していることが他の社員や取引先に知られ、風評を立てられてしまうことにもなりかねません。 逆に、労働組合の事務所で行うことは部外者の参加を許したりすることもあり、お勧めはできません。 そこで、社外の貸会議室などを利用します。ここまで挙げたリスクが無く、時間を区切って部屋を借りることで、交渉が際限なく長引くのを防ぐ効果があります。 いくらか費用はかかりますが、折半とするか、あるいは会社側の負担となることは致し方ありません。 それと、所定労働時間外に行うことにもいくつかの理由があります。 とくに相手方となる組合員が会社に在職している場合、本来ならば所定労働時間内に組合活動を行った場合には、その分の賃金を支払う必要はないのですが、払うようにと余計な要求をされることにつながります。 また、会社と労働組合双方が所定労働時間外に交渉を行うことで通常業務への影響を最小限にとどめ、他の社員への問題の波及を少なくすることができます。
② 交渉を行った際の記録の方法、席順
交渉を行った際の記録の方法についても実は重要です。 録音や録画は一見手軽で正確な方法ですが、大変な情報量となり、あとで要点を書き起こす手間は相当のものです。 そのためにあまりお勧めはできませんが、相手方が強固に主張するならば、会社側としても同様の記録をとらなければなりません。 記録の方法としては、書記係を設け、議事録として残すような形が良いでしょう。 なお、議事録の作成を組合側が行い、それに対して会社側にも記名押印をしてほしいと言ってくることがあるのですが、それに応じることは避けてください。 組合側の都合の良いように編集された議事録が、双方で妥結された事項となってしまいます。 もうひとつ、席順ですが、会社代表の席は入口近くに取り、労使間の距離は離します。 会議が長引いた場合、遮られることなく退出できるようにする狙いもあります。
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